東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1067号 決定
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〔決定理由〕三、そこで、附随の処分について検討する。
資料により認められる事実及びこれに基づく当裁判所の判断は以下のとおりである。
1 現在する別紙(二)の(1)の建物は昭和六年頃建築され、現在ではかなり老朽しており、同(2)の建物は昭和三八年頃建築されたものであるが、さして耐久性のある建物ではない。ただ、これらの建物は昭和四六年七月の期間満了時までに、朽廃に至るとは考えられず、また当事者双方の土地使用の必要等の事情を考えると、期間が満了しても更新の可能性が強いと予測される。右の更新の後には、現在建物の朽廃による借地権消滅が問題となると考えられるが、本件増築の許可によつてその問題も一応解消することとなり、この点で賃貸人に不利益を与えるといわねばならない。
2 なお、本件賃貸借は、約二年半後に期間が満了することになる。その場合、前述のように更新の可能性は強いにせよ、更新について紛争の生ずるおそれがあると考えられるが、本件許可に基づく建築がなされて程なくこのような紛争の起こる余地を残すことは適当でないと考える。そこで、許可に伴い借地期間を一〇年延長し、昭和五六年七月二八日までとすることにする。
3 右1、2の点に関する賃貸人の不利益を考慮し、申立人に財産上の給付を命ずるのが相当と考えられる。
そこで、その額について検討するに、本件裁判の及ぼす影響は借地全体にわたるものであるから、給付額の算定にあたつては、増築部分の敷地と見られる範囲の土地だけでなく、借地全体を基準とすべきであるが、借地の一部についての増築である点を度外視するのは相当でなく、この点を適切に給付額に反映させる考慮も必要と思われる。
ところで、本件借地は南北に長い長方形をなし、南側の約三五八平方米は崖地となつている。残る平坦部の価格は鑑定委員会の意見に従い3.3平方米当り一八万円を相当と考えるが、崖地の評価は必ずしも容易でない。本件の崖は高くその傾斜は急であり、これに土盛りを施した上建築することが不可能ではないにしても、万一の崩壊の危険等を考慮すると、実際に建築のできるのは、上部の比較的傾斜の緩い極く一部の範囲に限られると見るべきである。かような点を考慮すると、その価格は平坦地の半額に当る3.3平方米当り九万円と評価するのが相当と考える。
本件において、賃貸人の受ける前記不利益のほか、従前の経過として、既述の更新及び昭和三八年になされた別紙(二)の(2)の建物の建築の際、格別金銭の授受はなく、賃料も比較的低額であつたという事情があるが、反面借地の一部についての増築に過ぎないという点も考慮すべきである。
以上の諸点に鑑定委員会の意見(本件においては、一般に更新料として授受されている額の下限と見られる更地価格の二%をもつて相当とする)をも参酌し、前示の計算による更地価格の約1.5%にあたる八二万円をもつて財産上の給付額と定めるのが相当と考える。
4 賃料については、右委員会の意見に従い一ケ月一万九七〇〇円(ほぼ、3.3平方米当り五五円にあたる)に増額するの相当と認める。(安岡満彦)
(別紙)
(一) 借地
東京都世田谷区玉川尾山町一〇七番一宅地1162.97平方米(351.80坪)
実側約1184.79平方米〔うち平坦部分約826.44平方米(二五〇坪)、崖地部分358.31平方米(108.39坪)〕
(二) 現存建物
(1) 木造瓦葺二階建 居宅 一棟
床面積 一階 88.42平方米(26.75坪)
二階五 50.41平方米(15.25坪)
(2) 軽量鉄骨造亜鉛鉄板葺平家建 居宅一棟(未登記)
床面積52.29平方米(15.82坪)
(三) 増築の内容
別棟として
木造瓦葺二階建 居宅 一棟
床面積 一階59.50平方米(一八坪)
二階19.83平方米(六坪)を建築する。